
急遽登山にでかけた。ワシの山登りはいつも急遽。仕事が一段楽したり、エミさんからお許しが出たら即出発。有事に備え、山の道具はいつも部屋に出してある。(片付けていないだけ) それでも登山靴だけは必ず泥を落として油を塗っている。なんといっても今時珍しい革製。大学生の時に買ったのかな?当時としてはだいぶ奮発のドイツ製。靴底は一度替えたっけ。手入れ次第でいつまでも使える。山道具では一番の宝物です。
まず最初に言っておこう。今日の最高峰は
酉谷山 。どういうわけか今日の道中ずーっと頭の中に
「トニー谷」 がリフレイン。さぁ、これで皆さんもこの日報の道中「トニー谷」。
そして次に言ってしまおう。今日のコースはワシの知る限り
「奥多摩随一!」 。ヨコスズ尾根、長沢背稜からの景色は美味しいところだらけ。そして人の少なさ、道の起伏の少なさ、歩きやすさ、明るさ、天然樹林さ、空中感、スリル(落ちると死んじゃう場所が目白押し)、、、などなど。そして極めつけは
「ハナド岩」 からの大パノラマ。正直声を失いました。「こんな所に立っていいの?」という大絶壁。そこから見える奥多摩の主脈「石尾根」。その向こうに丹沢山塊すべて。左には大岳山、御岳山。ずーっと向こうに見えるギザギザはもしや房総の山々。右に目を移せばこれから進む長沢背稜の尾根、その一番高いところが雲取山。一個忘れてるね、
大富士山 。鷹ノ巣山の向こうに白い頭を見せていた。傘かぶってるよ。天気下り坂だね。
ここからもちっと詳細。
日原小学校を出発しヨコスズ尾根を目指す。地図で見ると尾根までかなりの勾配であるが、丁寧にジグザグ道(これ英語だったんだね。日本語だと「稲妻道」か)が付けられているのでとても歩きやすい。あたりは良く手入れされた植林。これだけ手入れされていれば植林も美しい。しばらく行くと天然林と植林に挟まれた道となる。ある場所は右手に天然林、左手に植林。稲妻道をカクンと折れると今度はしばらくその逆。その繰り返し。道は所々雪が残っている所もあれば、落ち葉がサクサクな所もあり、また泥が凍りついた場所もあり。楽しい。稲妻道を折れるたびに順調に高度を稼ぐ。無心で脚をロボットのように前に出し続けていれば、自ずと高い場所に導かれている。登山の最も単純にして明快な楽しさを味わえる区間だ。
稲妻道が終わり東斜面の木々が伐られ開けた場所に出る。ここにあまりに普通なUHFのアンテナが東京に向いて一本立っていた。道中所々「NHK設備へ」という杭が打たれていた。奥多摩の集落はどこも山に囲まれているので電波が届きにくい。だからこのような共同アンテナを山に立てる。我家もそう。裏山に立ってるはず。しかし実物ははじめて見た。「こんなのでいいんだ」と正直驚いた。それでもここまで資材を運んで設置するのは大変な労力だろう。感謝!
ここがヨコスズ尾根の始まりだった。いきなり右手は結構な断崖だ。全体的に巨岩がゴロゴロしている。この辺ではセメントの原料となる石灰が採れる。日原には鍾乳洞がたくさんあるが、これも石灰質な土地柄でこそ。そこかしこの巨岩も仲間である。石灰岩地域ではこの巨岩観察も楽しみの一つである。まるで日本庭園の親分の中を歩いているようである。
ヨコスズ尾根を核心に入った頃太陽が右手から射してくる。「あまり押すなよな、左の崖に落ちちゃうよ」と言うくらい射してくるし、それくらい狭い場所もある。眩しい陽光を掌で遮りつつ東方面を眺めると、立川の街が見える。川乗山は目の前だ。いい眺めだ。左に目をやると、奥多摩の主脈、石尾根が見えてきた。その向こうに富士山が頭を出す。やぁ、こっちもいい眺めだ。進行方向は緩やかな起伏の日本庭園。所々雪化粧。そこに右手から陽が差し木々の長い陰。いいねぇ。早朝出発のご褒美だ。
楽しすぎてまったく疲れない。「あと30分くらいかな?」と思っていた時、突然目の前に
一杯水小屋 が現れた。30分の計算ミスはかなり嬉しかった。「清貧」と言う言葉が似合う、古いが清潔な小屋。いつかここにも泊まってみたいな。エミ菓子パンをひとつ放り込み出発。疲れてないので休憩いらず。
この先の
三ツドッケ がヨコスズ尾根と長沢背稜のT字路になる。長沢背稜は東京と埼玉の都県境でもある。その昔、表街道を歩けない者たちも、この尾根を歩いて行き来したんだろうか。三ツドッケを踏んで左折しようと思ったが、ここから先の行程はことごとく頂を東京側に迂回しているのだ。いつの間にか三ツドッケを通り過ぎてしまった。確かに小さな頂が多すぎていちいち踏んでたら上り下りがかったるいかもしれない。おかげで起伏の少ない、ハイキング的尾根歩きが出来ると言うわけだ。それに見晴らしの悪い県境を歩くより、ちょっと下の見晴らしのいい線を歩く方が「優先順位が上」と判断したのだろう。正解!
ここから見える石尾根の雄大なこと。まるで龍が長々と横たわっているよう。奥多摩駅のあたりが尻尾の先でごつごつ背骨が隆起し、鷹ノ巣山は大きなこぶ。鷹ノ巣山から日原に下る岩尾根は「二度と下るもんか」と以前下って誓ったが、こいつも鳥瞰図のようにさらけ出されていた。上から見てもムチャクチャな勾配だ。ああ!岩尾根は右腕、稲村岩が玉だ!そして頭が雲取山。尻尾の先には大岳山、御岳山。大岳山はどこから見てもあの形なのが本当に不思議。奥多摩龍の背中のはるか向こうにもう一匹、相模の龍、丹沢の主脈が横たわっている。こちらも見覚えのある山ばかり。そして富士山。今自分が歩いている長沢背稜は奥多摩龍の子供だな。子供と言うにはデカイな。奥さんか。いやこちらのほうが長いか?あ、動物の世界はメスの方が大きいんだ。木々の開けた場所に来るたび立ち止まり見とれ、夢想する。
そして本日最大の見所
ハナド岩 に到着。到着というにはあまりにさりげない。コースから左に若干逸れる藪道があった。「おしっこ場でもあるかな?」と入っていくと、突然目の前が開け足元は大絶壁の行き止まり。なんでこんな極上のアトラクションがあるのに看板一つないんだ!後で見つけたが分岐にちょびっと書いてあった。このさりげなさがまた気に入った。自然がお膳立てするアトラクションの前には人工的なそれは到底かなわない。スケール、タイミング、そしてタダ。今まで尾根道からチラチラ見てたものが目の前に「これでもか!」と広がる。ちょっとウソのような風景。あまりに現実離れしているので、そのまま腕を広げて飛び出せば飛べそうな気にさえなってくる。ここは騙されたと思って一度行って欲しい。後悔させません。
ここでしばらく放心し放尿し本線に戻る。今日の絶頂を記したらあとはもうどうでも良くなった。酉谷峠から
酉谷山 への往復で、ようやくアイゼンを出した。ここからの景色も良かったよ。うん、良かった。ここから日原への下山コース、小川谷は生きています。生々しい崩落箇所が目白押し。道も寸断されている場所多数。上から見てあれほどの激しい切れ込みの谷なのだからうなずける。よくよく注意するべし。小川谷林道1.5時間はギョサン必須。もちろん今回持っていない。大教訓。ああ、忘れた。長沢背稜からは白い屋根、白根、谷川、燧、朝日、那須、男体、、、、が遠望。これも極上。
以上!
氷川城0520-旧日原小学校0600-0757一杯水避難小屋0810-0842ハナド岩0856-0926七跳山0955-1113トニー谷山1130-1313山又-1340林道-1530日原鍾乳洞-1600旧日原小学校
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- 2011/03/06(日) 23:45:22|
- 山登り
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| コメント:6
かみさんがダウンして、結局鷹ノ巣山には、いけませんでした。山登りに本格的にはまりそうです。偶然見つけましたが↓同じ時間なんじゃないですか?
http://blogs.yahoo.co.jp/rockbaka
- URL |
- 2011/03/09(水) 08:10:10 |
- タッキー #WzzJX4NY
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まきちゃん
やめてよ~。
ほんとにそういう雰囲気満点だから。
一人でいけなくなったじゃない。
ワシが泊まりに行く時、責任とって一緒に来て下さい。
- URL |
- 2011/03/09(水) 09:00:20 |
- エミケン ケン #VTbcqKWk
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ケンさん
はじめまして。酉谷の山頂手前と小屋前でお話させていただいたおやじです。小川谷は、ちょっと前にケンさんが歩かれているはずと思って何とか(よろよろと。。。)歩ききりました。一杯水は一人だと広すぎるかも。。。(^^ゞ
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- 2011/03/12(土) 23:29:05 |
- oota #Jh0gB2N.
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ootaさま
見つけ出してくれたんですね!
ありがとうございます。
「小川谷をあの荷物で下るのは難儀だなぁ」と思いつつ私も下っていました。
無事でなによりです。
古里からだとだいぶ長旅でしたね。
私はジョギング代わりの山登りのようなもので、もっぱら日帰りばかりですが、テント持っての縦走も久しぶりにやりたいと思っています。どうぞご指導よろしくお願いします。
機会があれば我家にも顔出してください。
- URL |
- 2011/03/13(日) 06:46:57 |
- エミケン ケン #VTbcqKWk
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